
2013年7月8日
アンジェリーナ・ジョリーと遺伝性乳がん
アメリカの女優、アンジェリーナ・ジョリーさんが自身の乳がんの発症リスクを下げるために予防的乳房切除を行ったことはテレビや新聞でセンセーショナルに取り上げられ、「アンジー・ショック」という言葉ができるほど大きな話題になっています。
母親をがんで亡くしている彼女は、自分自身のがんの危険性を調べるため遺伝子検査を受け、そこで乳がん、卵巣がんの発症と関連する遺伝子BRCA1に変異があることがわかったのです。
遺伝子BRCA1とBRCA2に変異を持つ人は乳がん、卵巣がんを発症しやすい人とされ、この変異により発症するものを遺伝性乳がん卵巣がん(HBOC)症候群と呼びます。
6月28日から行われた日本乳癌学会では、このHBOCに関する講演に乳腺専門医をはじめ多くの医療関係者が集まり、熱気にあふれたプレゼンテーションと質疑応答が行われました。アンジー・ショックは一般市民だけでなく、医療現場にも大きな影響を与えていることがうかがわれました。また、「この件以来、乳がん患者さんから『私の娘や姉妹も乳がんになるのではないでしょうか?』という問い合わせが多い」という話もよく聞かれました。
乳がんに限らず、がんの発症には遺伝子が関わることもあり、「うちはがん家系だから、自分もがんにならないか不安」という話もよく聞きます。それではこのHBOCが発症する確率はどのくらいあるのでしょうか?
日本乳癌学会「患者さんのための乳がん診療ガイドライン」によると乳がん発症者の5〜10%が遺伝性であると考えられるそうです。逆に言えば、乳がん患者さんの90〜95%は遺伝性ではないということになります。
ご自身が乳がんを患っていたり、ご家族に乳がんの方がいたりして、遺伝性の乳がんを心配される方は、お医者さんに相談する前にまず、下記の項目をチェックしてみてはいかがでしょう。
母方、父方それぞれの家系について、以下の質問にお答えください。あなた自身を含めたご家族の中に該当する方がいらっしゃる場合に、□にチェックを入れてください。
- □ 40歳未満で乳がんを発症した方がいますか?
- □ 年齢を問わず卵巣がん(卵管がん・腹膜がん含む)の方がいらっしゃいますか?
- □ ご家族の中でお一人の方が時期を問わず原発乳がんを2 個以上発症したことがありますか?
- □ 男性の方で乳がんを発症された方がいらっしゃいますか?
- □ ご家族の中でご本人を含め乳がんを発症された方が3 名以上いらっしゃいますか?
- □ トリプルネガティブの乳がんといわれた方がいらっしゃいますか?
- □ ご家族の中に BRCA の遺伝子変異が確認された方がいらっしゃいますか?
上記の質問に一つでも該当する項目があれば、あなたが遺伝性乳がん卵巣がんである可能性は一般よりも高いと考えられます。
日本HBOCコンソーシアム・ホームページより
もし、上記のチェック項目でご自身の遺伝性が疑われた場合は、かかりつけの先生にご相談するか、日本HBOCコンソーシアム・ホームページにHBOCの遺伝子検査、遺伝カウンセリングを実施している医療施設が記載されていますので、近くの専門の施設にお問い合わせください。