


3.乳房再建手術について
乳房切除術と再建
乳がん手術には乳腺のうち、がんの病変部分だけを切除して乳房を残す「乳房温存手術」と
乳房すべてを切除する「乳房切除術(全摘術)」があります。
この2つの術式では、生存率こそ差がありませんが、乳房を大きく失うことで、精神的な
ダメージを受けることを避けたいということから、乳がん患者さんの半数以上は温存手術を
行っています。
ところが、最近、この傾向に変化が見られ、乳房切除術を望む患者さんが増えつつあります。
その理由のひとつは、乳がんの局所再発率が乳房切除術の方が低いこと。乳房温存手術では、
事前に入念に画像診断をおこなっても、可視化できないごく小さいがん細胞の取り残しが起こ
ることがあります。さらに乳房切除術と併せて行う乳房再建術が進歩し、美容面での患者さん
の満足度が高くなりました。
また、乳房再建術に使われる人工乳房が公的保険の適用を受けられるようになり、経済的な
負担が軽くなったことも理由のひとつです。
命を守りながらも、女性らしさを失いたくない、生活の質(QOL)を落としたく無いと考え
る女性は多く、乳房再建手術をがん治療自体としてとらえている医療機関もあります。
どんな手術を受けるか、検討する際には、乳房温存術とともに「乳房切除+再建手術」という
選択肢もあるのです。
再建手術を行うタイミング
乳房再建手術を行う時期には「1次再建」と「2次再建」の2つがあります。
1次再建:乳がん手術と同時に行う
メリット:乳房の喪失感が少なく、手術回数も少ない
2次再建:乳がん手術を含め乳がん治療が終了した後、改めて行う
メリット:再建するかどうかも含め、ゆっくりと検討できる
どちらがよいかは、個人の体調や病状によっても異なるので、自分の希望を
主治医に伝えて相談されるとよいでしょう。
再建手術の方法
乳房再建手術には大きく2つの方法があります。
人工乳房手術:人工乳房(シリコン・インプラント)を用いる方法
自家組織を使う手術:「皮弁法」と言い、ご自身のお腹の組織を用いる方法と背中の組織を
用いる方法の2つがあります。
公的保険の適用
自家組織を使う再建手術については今までも保険適用でしたが、この度、人工乳房についても
公的保険が適用されるようになりました。但し、遺伝性乳がん卵巣がん症候群(HBOC)の
方が、予防のために受けるがん未発症時点での乳房切除に伴う乳房再建では、保険適用になら
ないのが現状です。もちろん、美容目的の手術には保険は使えません。
なお、健康保険で人工乳房による再建手術が受けられるのは「日本乳房オンコプラスティック
サージャリー学会」によって作成された診療ガイドラインに則った施設と講習を受講した医師
に限定されています。詳しくは主治医や医療スタッフにお問い合わせください。